英国ボソボソ暮らし

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名前について

この国に生活していて、いまだにこちらの人の名前が覚えられなくて困ります。漢字ですと覚えられるのですが、英語のスペルさえ知らない耳からだけの名前の場合はなおさら覚えられません。背景知識がないので、何かの登場人物や歴史上の人物に結び付けて覚えることができないのも一因なのかもしれません。ほとんどの場合は、わたしのもの覚えの悪さが原因ではあるのですが。こちらで生活する上で本当に困ります。

英語圏の国でも、名前には英語以外のさまざまな言語の名前が存在します。多民族と混ざり合ってきた歴史がありますから当然のことです。数世代前に移住してきたという家の場合、名前はジョンなどのように英語でも、姓はカルネのように英語ではないものもよく見かけます。ちなみにカルネさんは3世代前が東欧の出身で、後に名前の最初の文字のKをCに変えて多少はなじみやすくしたのだそうです。

逆に、まったく英国の家系なのに、つまり姓は英語名なのに、名が英語でない場合があります。女子の場合に多いように思います。娘に対する親の思いでしょうか。たとえば、先日お亡くなりになったケンブリッジ大学で日本学を創設なさったブラッカー女史は名前を Carmen といいます。英語読みではカーメンですので私たちもそのようにお呼びしていましたが、これはオペラでおなじみの「カルメン」のことです。スペイン語の名前です。日本では女史はカルメンさんだったと思います。事実、日本人向けの名刺にはカタカナでカルメンと表記されていたのを覚えています。ほかにも、たとえばLola(ローラ)という名前の知人がいます。身近にいる人で変わった名前では Inez(イネス)というひともいます。いずれもスペイン系の名前です。面白いことに、このような外国語が起源の名前を付けても、こちらの人たち、つまり英国人たちは、あまり違和感を感じないようです。ことさら家系にスペイン人の祖先がいるのだろうかとは想像しないそうです。この点が、ほぼ単一民族で何世紀にもわたって続いてきた日本の社会とは異なります。さすがに日本では両親が日本人の場合、娘に「ローラ」といった名前は付け難いのではないでしょうか。

話は飛んで桃山時代。1592年から1598年にかけて豊臣秀吉が朝鮮半島に遠征した戦というのがあります。文禄・慶長の役です。このときに朝鮮陶工の一団が日本に連行されてきます。1598年のできごとです。茶の湯の大成者・千利休が秀吉の命で自死したのが1591年ですから、当時は武家のあいだで茶の湯が盛んに行われていました。唐物という呼び方をされていた中国・朝鮮からの茶碗や茶入などの茶道具が当時のトップブランドでした。日本ではそのころようやく志野、織部、黄瀬戸、伊賀、信楽、備前などの陶器が出現してきますが、磁器はまだありませんでした。あの青や白の硬質の焼き物を作れる技術は日本にはありませんでした。中国に遅れること2000年、朝鮮に遅れること1000年だそうです。唐物としての輸入品があっただけです。したがってその高価な唐物を自国で作りたいという需要は非常に高かったようです。

陶工として薩摩藩に連れてこられた姓氏は、伸、李、朴、卞、林、鄭、車、姜、陳、崔、廬、沈、金、白、丁、何、朱の17氏だそうです。男女合わせて70名ほどが、異国の地(現在の鹿児島)で生活を始めることとなります。そのときから苦難に苦難を重ね、ようやく20年後に、白い陶磁器を焼くことのできる土とそれに適した窯と焼き方を見つけ出すことができます。この人たちの中に沈壽官(ちんじゅかん)という人がいました。薩摩焼の創始者です。

先月末にロンドンで行われた十五代沈壽官さんのレクチャーにいき、薩摩焼の歴史などをお聞きしてきました。司馬遼太郎の著書に『故郷忘じがたく候』というのがあります。朝鮮陶工のいきさつと沈壽官さんの代々のことが描かれています。鹿児島のその地に代々住み続けている家系で韓国姓を維持しているのは沈家などわずかだそうです。薩摩藩主からだいだい保護を受けてきて薩摩焼きを大成していった経緯があるとはいえ、400年の長きにわたり「沈」姓を守り続けるということはまさに驚愕です。多少外国人と接触を持っていて日本の中の外国人の生活のことを知っている人なら、日本の社会の中で外国姓を維持して行くことの含意がお分かりいただけるかもしれません。アイデンティティーとは何か、ルーツとは何かということを考えさせられます。

chinjukan.jpg
ご自分の姓名についてどう思うかという多少プライベートな質問に対し
10分近くもお答えいただいたことに感謝するとともに、ここに沈壽官と
いうお名前に対し敬意を表したいと思う。





テーマ:イギリス生活 - ジャンル:海外情報

  1. 2009/10/27(火) 11:01:26|
  2. 日記
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2
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コメント

私は神戸市長田区の高校へ行ってましたが
韓国人の方が比較的多い地区でした。
友達の中に、そのまま韓国姓を使っている子と
日本姓を使ってる子がいました。
いろんな背景があって、
ご両親が決められたことなんだろうなって思ったりしてました。
差別的な問題が多かったと察しますが、
それでも韓国姓を名乗ってる方たちに対して、
自分のルーツに誇りを持っている姿勢が
素晴らしいなって思ってました。

話し変わりますが、海外にいると
両親の国籍が違う子供と接する機会がありますが、
自分の2つのルーツを理解するには幼すぎる子が
アイデンティティー形成段階で、問題をかかえるケースが
あるように思ったりします。
バックグラウンドが人間形成に及ぼす影響は
結構すごいんじゃないかなって思います。
人間って不思議ですね。
  1. 2009/11/06(金) 02:13:03 |
  2. URL |
  3. メアリー #22UKzUiM
  4. [ 編集 ]

メアリーさん

「名は体を現す」とはよくいったものだと思います。
その国の文化や言語に精通している外国系の人の場合、名前がその国のものと同じ場合と違う場合とでは、人間形成が微妙に違ってくるんでしょうね。
つまり、アイデンティティの問題です。

メアリーさんの高校の場合でもそういう状況があったのですね。ではなおさら、沈さんが400年も韓国姓を維持している凄さがお分かりになりますね。

人間はまだまだフロンティアです(笑)。
  1. 2009/11/06(金) 03:22:33 |
  2. URL |
  3. ヘッジホッグです #hb5ArteM
  4. [ 編集 ]

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