英国ボソボソ暮らし

ヘッジなブログです

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
  1. --/--/--(--) --:--:--|
  2. スポンサー広告

蜷川幸雄ロンドンの歌舞伎・十二夜 -- まとめ

最初はオリンピックでの日本選手の活躍を愛でる記事を読むような「下心」があったので、批評記事の印象はなかなか辛いものがありましたが(笑)、それとは別にこの公演をイギリスの観客や批評家はどう見たのかを知りたいという思いがあり、記事を翻訳してみたわけです。やはり少し背景情報を持っていないと批評記事を正面から受け止めることは難しかったかもしれません。以下は私の俄か勉強。

印象
署名記事の土壌がある英国なので、リップサービス的な記事はまず書かないでしょうね。そんなふうに記事を書いたら、プロの(いやアマチュアでも)批評にはならないですから。批評家としての自分への評価にもつながらならないでしょうし(まあこれは日本でも署名記事の場合は同じですね)。

どんな人が書いているのか
インディペンデント紙・Rhoda Koenig
もとニューヨーカー、現在ロンドン在住。もとナイトクラブ歌手(!)。現在、トラベル ライター、文芸編集者、シアター批評家(Punch誌とIndependent紙)。何でも書く実力派フリーランサーみたいです。

タイムズ紙・Donald Hutera
タイムズとサンデータイムズの記者。かなり無難な批評の書き方をしている感じです。ネットで調べているときに、ここでコメントをいただいた「たまてぼっくす」のurasimaru さんのブログページでHuteraの記事の翻訳http://tamabebox.exblog.jp/3579059/を見つけました! Huteraは歌舞伎批評の経験者でした(笑)。だから今回の記事も無難に好意的だったのかもしれませんね。

ガーディアン紙・Lyn Gardner
ガーディアン専属。小さいときから劇場通いだったそうで、ばりばりのシアター批評家ですね。知り合いに聞いてみたら次のような感想をいただきました。
「辛口のおばさんで、ユニークな意見の持ち主。しばしば他紙の批評家と意見がぶつかる。壮観、豪華、虚飾、誇示といったことが嫌いで、スペクタクルなものに対しては非常にシニカルな記事を書く。彼女の書く批評の 95% は3★かそれ以下。ガーディアン紙はお高くとまっているという世間の評判は、彼女の記事にも一因がある。」

テレグラフ紙・Dominic Cavendish
テレグラフでコメディーとシアターの批評を担当しているようです。劇の脚本も書いているようで、George Orwell's 'Coming Up For Air' を脚色した劇を、上記の知人が批評記事を書いたそうです。Cavendishは批評と制作の両側を知っている記者なんですね。だからあのような好意的な十二夜の記事になったのでしょう。

歌舞伎だけなら
一般的に英国での歌舞伎に対する批評は良いようです。悪く評価できるだけの内面的蓄積がない(勉強はしますが歌舞伎役者と張り合うほどにはいかないかも)。おのずと他文化として尊重せざるを得ないのかもしれません。
4つ★記事: http://www.guardian.co.uk/stage/2006/jun/01/theatre
4つ★記事: http://www.musicomh.com/theatre/kabuki_0606.htm

シェイクスピアだけなら
英国でのシェイクスピア劇では、学校でやるシェイクスピア劇もRSCがやる劇も、使用するテキストは基本的に同じ。400年前の昔の英語のテキストを使用します。日本でいうと、関ヶ原の戦いが1600年。その頃の日本語をそのまま芝居でしゃべっていることになります。英語の場合は400年前のものでも、それほど現代人にとって理解不可能な英語ではないそうです。基本的にシェイクスピア劇はテキスト中心の演出になるようで、外面を着飾らないからこそシェイクスピアの内面が舞台にでる、と考えるようです。

歌舞伎 vs シェイクスピア
ロンドンでの公演は、観客の反応はともかく、批評家の場合は演目が「シェイクスピア作による十二夜」なので、シェイクスピア劇としてみざるを得ないわけです。ほとんどがこの観点を含めての批評です(あたりまえですが)。これは歌舞伎の「ビジュアル」とシェイクスピアの「テキスト」の対峙といった図式になってしまう傾向にあるようです。

まとめ
4つの批評記事を翻訳したときは、なんと辛口なとおもいましたが、あれから何回か読み直しているうちに、印象が変わってきました。好評度の順では
★★★★☆ タイムズ紙・Donald Hutera
★★★☆☆ インディペンデント紙・Rhoda Koenig
★★★☆☆ テレグラフ紙・Dominic Cavendish
★★☆☆☆ ガーディアン紙・Lyn Gardner
ですが、私は Lyn Gardner の記事がとても「噛み応えのある」内容だなあと感じるようになりました。彼女の観点も文章もとても読み応えのあるビビッドな記事ではないでしょうか。

Lyn Garderの最後の一文「今夜の公演はシェイクスピアに対して何かを自由に付け加えているかというとそうでもない。むしろ歌舞伎というすでにミイラ化している美学を使用して、シェイクスピアに防腐処理を施しているかのような印象を私は受ける」といった表現は、むしろゾクゾクするような興奮をもたらす文章です。

「はっきりいって、今回の公演は鯨を見られる唯一の十二夜だと思う」という批評は、蜷川幸雄ならその重みが分かる文章なのかもしれません。

最後に戯れ言。外国の役者が日本にきて歌舞伎を英語で上演したらどういうことになるのでしょうか?




テーマ:イギリス生活 - ジャンル:海外情報

  1. 2009/04/04(土) 23:12:48|
  2. 蜷川幸雄ロンドン歌舞伎
  3. | トラックバック:1
  4. | コメント:7
<<日本の文化が好きなひとたち | ホーム | 蜷川幸雄ロンドン歌舞伎・十二夜: イギリスの批評記事 4 -- デイリー・テレグラフ紙>>

コメント

あ、どうもリンクしていただいてありがとうございます。海老蔵好きなのであの時は力が入りました^^;
4月6日の日経の夕刊に十二夜の現地レポートが載り、蜷川氏の「冒険が受け入れられ、ホッとした」との弁。

---
最近英国人のメール友達から桜についてのメールが来て、桜が散るということに対する日本人の感覚を伝えたかったんですがあまりにもディープすぎてギブアップしました。わびさびとは?なんて聞かれると困るので…(相手は日本語教室に通ったことがあるそうですが日本に来たことはありません)

英国の春を代表する花は黄水仙だと思いますが、あれは純粋に喜びっていうかんじですね。夜が長い冬の後だけに。
おっと、話がずれました。水仙祭りに書いた方がよかったですね。
  1. 2009/04/09(木) 15:12:42 |
  2. URL |
  3. urasimaru #mQop/nM.
  4. [ 編集 ]

urasimaru さん

> 蜷川氏の「冒険が受け入れられ、ホッとした」との弁

うん、それはよかった。大冒険だったでしょうから報われましたね。

------------------------------------------------------------
> わびさびとは?なんて聞かれると困るので…

3月は日英友好150年だかの企画で BBC が「Hidden Japan」
http://www.bbc.co.uk/bbcfour/japan/
を組んでいくつかの番組を放送していました。そのなかのひとつに
「In Search of Wabi Sabi with Marcel Theroux」
http://www.bbc.co.uk/programmes/b00j8bkc
があり、いわゆるリアリティ番組なのでお遊び感覚ですが、わび・さびを扱っていました(BBC4)。レポーターは最後は禅寺まで挑戦してました(えらい!)。
  1. 2009/04/09(木) 17:43:01 |
  2. URL |
  3. ヘッジホッグです #hb5ArteM
  4. [ 編集 ]

残念ながらBBCの動画がこっちでは見られないみたいです。(国際著作権が高いからみたいです)
でもメールに使えます。ありがとうございます。

サラリーマンの愛憎、気になる…
  1. 2009/04/09(木) 21:14:11 |
  2. URL |
  3. urasimaru #mQop/nM.
  4. [ 編集 ]

urasimaru さんへ

Japan: A Story of Love and Hate
見逃しました(笑)。面白そうですね。

BBC iPlayer は実放送後 1 週間だけネットで見ることができますが、それを過ぎるとだめです(私も見られません)。
  1. 2009/04/09(木) 21:50:17 |
  2. URL |
  3. ヘッジホッグです #hb5ArteM
  4. [ 編集 ]

リンクさせていただきました。

初めまして。昨日東京公演を観劇しまして、その後の検索でこちらへたどりつきました。ロンドンでの評価が気になっていましたので大変参考になりました。ありがとうございます。
拙ブログの記事内にリンクさせていただきました。不都合がございましたらお知らせください。
  1. 2009/06/17(水) 12:51:23 |
  2. URL |
  3. miyuki #eoiZu7NI
  4. [ 編集 ]

miyukiさん
はじめまして。ロンドン公演については日本での劇評があまり具体的なものがみつかりませんが、どうなんでしょうかね。
東京公演は好評でしょうね(想像ですけど、(笑))

そちらのブログにもおじゃましました。
  1. 2009/06/17(水) 19:42:13 |
  2. URL |
  3. ヘッジホッグです #hb5ArteM
  4. [ 編集 ]

ありがとうございました。

ブログにいらしていただいた上コメントもありがとうございました。
そうなんです。ロンドン公演はどうだったのか調べてみましたがあまり出てきませんでした。
イギリスには3回行っていてぜひまた行ってみたい国です。これからもよろしくお願いします。

fc2の別ブログにもトラックバックさせていただきました。不都合がありましたらお知らせください。
  1. 2009/06/17(水) 23:08:57 |
  2. URL |
  3. miyuki #eoiZu7NI
  4. [ 編集 ]

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバック URL
http://hedgehoguk.blog23.fc2.com/tb.php/31-a1cb90f8
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

蜷川幸雄ロンドンの歌舞伎・十二夜 -- まとめ

最初はオリンピックでの日本選手の活躍を愛でる記事を読むような「下心」があったので、批評記事の印象はなかなか辛いものがありましたが(...
  1. 2009/06/17(水) 23:40:41 |
  2. 50からの楽天的演劇生活

プロフィール

ヘッジホッグです

Author:ヘッジホッグです
95年から英国在住

ご訪問ありがとうございます。英国でハリネズミが歩くごとくボソボソと暮らしています(♂)。

気に入った記事には ヘッジホッグです ボタンを押してくれると嬉しいです。

コメントの入力ウィンドウが表示されていない場合は、コメント(記事下部)をクリックすると、コメントが入力できます。ひとこと書いてくださーい。名前(ニックネーム)とタイトルと本文だけで OK。パスワードを入れると後で自分で修正・削除できるみたいです。

ブログ ランキング参加中

下のボタンをポチッとお願いします。
blogram投票ボタン <----------

最近の記事(+コメント)

カテゴリ

日記 (57)
プラハの歩き方 (6)
ブリティッシュ アート (5)
蜷川幸雄ロンドン歌舞伎 (5)
Thriplow 水仙祭り (6)
旅行 (0)
Holga カメラ (3)
未分類 (1)

月別アーカイブ

カレンダー

03 | 2017/04 | 05
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 - - - - - -

リンク

このブログをリンクに追加する

最新トラックバック

検索フォーム

RSSリンクの表示

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QRコード

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。